これまではコミュニケーションの活性化や組織力の強化などを図るのを目的とした社員旅行・慰安旅行を実施してきたという職場や企業が多かったと思います。
しかしながら、プライベートと仕事は分けたいと考える若手社員が増え、「社員旅行に行きたくない」「社員旅行の上手な断り方」などネガティブな意見が続出。実施に苦慮しているという声をよくききます。
なんとか前向きに社員旅行へ参加してもらえるように自由度の高いプランやゲーム性のあるプログラムを取り入れる、仕事のスキルアップに役立つ研修型・視察型などを取り入れる、と工夫してきた職場も多いはず。
しかし、コロナ禍でなかなか大勢が集まる機会が減り、リモートワークなどで孤独を感じる社員が増加。ここ数年はライフスタイルや自分自身の健康について、目を向ける機会が多かったように思います。
そこで今回は、心身の健康増進や精神的幸福をテーマとする旅行「ウェルネスツーリズム」に注目。日常から離れ、自分自身と深く向き合い、新しい自分を発見するきっかけとなるような旅のスタイルとして話題を呼んでいます。
社員が心身の健やかさを保ち、仕事への生きがいや活力を見出し、ワーク・エンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態のこと)を高めることができるといわれる、旅のあれこれについてご紹介していきましょう。
「ウェルネスツーリズム」とは?「ヘルスツーリズム」との違いについて
「ウェルネスツーリズム」とは、豊かな人生を送るためのアクションを提供する旅の総称。旅を楽しみながら、自分自身を見つめ直し、新しい自分に出会うなど、心身のリセットやメンテナンスを行うというものです。
いわゆる「リトリート(転地療養)」と呼ばれる過ごし方で、仕事や家庭などの日常を離れ、自分だけの時間を過ごしたり、いつもとは違う体験をすることでリラックスすることが主な目的となります。
「ヘルスツーリズム」とは、自然豊かな地域を訪れ、健康回復や健康増進を図る「健康×観光」を組み合わせた旅のカタチ。エクササイズや食事療法、自然療法、医療サービスなどを活用して体の健康を整えるのが目的です。
「ウェルネスツーリズム」は体の健康だけではなく、メンタル面にも重きをおいた旅行といえるようです。
コロナ禍でメンタル面での不調や不安を感じる人が増え、「ウェルネスツーリズム」のニーズが拡大
これまでの旅は日常を離れ、観光地やグルメ、体験アクティビティを楽しむということに重きを置いてきました。しかし、コロナ禍が長引く中で、人とのコミュニケーションが減り、家族とも気軽に会えないという状況が続き、不安や悩みを抱える人が続出。
リモートワークが続き、仕事へのちょっとした悩みを打ち明ける機会が減ってしまったと感じている社員も多いことでしょう。
特に新入社員は入社してすぐにリモートワークとなり、他の職場の仲間とまったく顔を合わせていないという問題も。せっかく入社した会社をすぐに辞めてしまったという話もよく耳にします。
体の健康面はもちろんのこと、メンタルヘルスにも配慮した旅のプログラムを取り入れることで、自分自身を見つめ直し、新しい発見や自分の殻を打ち破るきっかけ作りをする。そんな「ウェルネスツーリズム」はまさに現代の悩みにフィットする旅のカタチといえそうです。
2023年5月に東京ビッグサイトで開催された「国際ウェルネスツーリズムEXPO」が紹介するデータによると、2020年では約56兆円規模のマーケットが2023年には約166兆円になるのではと期待されています。
今後、社員旅行・慰安旅行でも「ウェルネスツーリズム」をテーマとした旅へのニーズは拡大していくと考えられるでしょう。
「ウェルネスツーリズム」がもたらすワーク・エンゲージメントの向上
「ワーク・エンゲージメント」とは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態のこと(参考元:厚生労働省ホームページより)。オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ(Wilmar B.Schaufeli)教授らにより、「バーンアウト」(燃え尽き症候群)の対概念として提唱されたものです。
活力(仕事から活力を得ていきいきとしている)、熱意(仕事に誇りとやりがいを感じている)、没頭(仕事に熱心に取り組んでいる)の三つが揃って充実している心理状態を指しています。
ワーク・エンゲージメントは仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知。ワーク・エンゲージメントの高い社員は仕事が好きで楽しく、働きがいを感じている状態ととらえています。
企業側にとっても社員にとってもこのワーク・エンゲージメントの向上は大切な課題。
「忙しく働いていないと不安だから」といういわゆる「ワーカホリック」とは異なり、働くことをポジティブにとらえていることに意味があります。
働く人の心身の健康増進と仕事のパフォーマンス向上を同時に叶えるアクションとして、「ウェルネスツーリズム」はまさにぴったりな旅といえるでしょう。
「ウェルネスツーリズム」とは具体的にどのような旅を楽しむもの?おすすめのプログラムは?
「ウェルネスツーリズム」のベースは旅を楽しむこと。自然豊かな場所を訪れ、心身を開放できる環境に身をおくのが大切です。
地元の伝統や文化を体験したり、瞑想やヨガなどで自分自身の内面を見つめ直す、何もせずにのんびりと過ごし、スパなどで癒されるなどなど。「ウェルネスツーリズム」のプログラムは様々です。
「国際ウェルネスツーリズムEXPO」で出展されたブースの中から、おすすめの行き先やアクティビティ、プログラムなどをダイジェストでご紹介していきます。
団体・グループ旅行人気No.1の沖縄へ「ウェルネスツーリズム」
まず一つ目にご紹介するのは沖縄県南城市を拠点に活動しているイーストホームタウン沖縄。代表取締役社長・CEOである相澤和人さんは心理カウンセラーの資格もお持ちです。
企業向けの研修プログラムとして心理テストやカウンセリング、講義、禅とマインドフルネス、認知行動的なアプローチなど、ストレスに強い思考と行動を身に付けるためのさまざまなプログラムを提供。
講義も会議室の中だけではなく、砂浜で行うなど、日常とは異なる環境に身を置き、新しい自分に出会うためのアプローチも。企業研修として何度もリピート利用する会社も多いそうですよ。
各企業の課題に合わせたプログラムの企画はもちろんのこと、ビーチやグスクなどを巡りながら行う「琉球の聖地巡り リトリート」、ビーチで行う「ヨガ、座禅プログラム」など、単発での利用もOK。旅行プランの一部として、まずは気軽に取り入れるのもおすすめです。
2つ目は同じ沖縄県の宜野座村(ぎのざそん)での取り組み。宜野座村は沖縄本島のほぼ中央に位置し、太平洋に面した東海岸にあります。阪神タイガーズ1軍のキャンプ地として知られており、コバルトブルーの海と緑あふれる山々、マングローブの群生が見られる川など、自然の宝庫。
特別な観光資源はありませんが、沖縄の原風景ともいえる素朴な農村で、懐かしく温かくのんびりとした時間が流れる場所です。宜野座村ではこの“資産”を活かした「ウェルネスツーリズム」のプランを提供しています。
中心となる施設は「タピックタラソセンター宜野座」。海水を人肌ぐらいに温めたタラソプール、ジャグジーで極上の癒しを体感できます。
水中ボディワーク「WATSU」や海水温熱セラピー、アクアプログラム、マッサージ、カイロプラクティック、トリートメント、ヨガなどバラエティに富んだプログラムがいろいろ。
朝日を楽しみながら早朝ヨガを楽しんだり、ダムまでのサイクリングツアー、月光浴海水浴など宜野座村ならではのアクティビティが用意されていますよ。
島根県が仕掛ける「ご縁旅×美肌旅」
島根県といえば真っ先に思い浮かぶのは出雲大社でしょうか。豊かな自然が残り、古代史の重要な舞台ともなっている島根は、現代人が忘れている”自然崇拝”や、すべてのものに魂が宿るとする豊かで鷹揚な“多神教”の考え方を思い出させてくれます。
暮らしと共に生き続ける伝統芸能“石見神楽”や出雲神話へと結びつく祈りの文化、日本列島が形成された大地の成り立ちを見ることができる”隠岐ユネスコ世界ジオパーク”、美肌を育む気象環境・温泉など、ここでしか体感できないさまざまな恩恵があります。
観光スポットはたくさんありますが、ぜひ自然と共生しながら営まれてきた暮らし、海や大地、森の中で自然に包まれながら癒されるリトリート体験、“医食同源”をテーマにした食体験などなど。
一味違う切り口で島根への旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
ユネスコ世界ジオパークに認定「高知県室戸市」
室戸市は四国の東南端にあり、市全体が室戸ユネスコ世界ジオパークに認定されているところ。室戸岬から西側の地域は、大地の隆起と海水準の変動で作られた「海成段丘」というユニークな平地が広がるなど、世界的に見てもユニークな地形をしています。
室戸岬は巨大地震が繰り返し発生した痕跡が残され、海底に噴出したマグマが急速に冷え固まった「枕状溶岩」が露出するなど、地球のダイナミックな営みを間近で観察できる稀有なスポット。
空海(弘法大師)が悟りを開いたといわれる「御厨人窟(みくろど)」や水深200~300mからわき上がる室戸海洋深層水など、神秘的で自然のパワーにあふれた恵みがたくさんそろっているのは、ここならでは。
癒しだけではなく、新しい自分に出会える、そんな可能性を秘めた旅先ではないでしょうか。
日本仏教を代表する聖地「高野山」
標高1,000mクラスの峰々に囲まれた山上盆地が広がる高野山は、816年に空海(弘法大師)が開いた真言密教の聖地。「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産にも認定され、117もの寺院が密集しているエリアです。
「一山境内地」とされ、「奥之院」「壇上伽藍」を二大聖地に、数多くの方から信仰を集めています。奥之院参道には樹齢約700年を超える杉の木立が連なり、皇族や諸大名、文人、庶民に至るまであらゆる人々の墓石や祈念碑、慰霊碑などが立ち並び、壮観です。
高野山では「写経」や「阿字観」と呼ばれる瞑想、「授戒」「宝来作り」などさまざまな修行体験が可能。また、宿坊体験を通じ、真言密教の修行や空海の教えの一端に触れることができます。
心を空っぽにして、今の自分と向き合うよい機会が得られるのではないでしょうか。
都市型ウェルネスツーリズムを推進している名古屋
名古屋というとものづくりの街、大都会というイメージですが、歴史や文化、芸術、自然にも恵まれたエリアであることを再認識。ウェルネスを切り口とした過ごし方やアクティビティを市を挙げて提案しています。
関東・関西エリアからもアクセスしやすく、週末や仕事帰りに気軽に出かけられるロケーション。都会のど真ん中にあるとは思えない、凛とした空気が流れる「熱田神宮」や国の重要文化財にもなっている温室前館がある「東山動植物園」の他、名古屋の伝統文化を気軽に身近に体験できる「芸処名古屋旅」の提案も。
自然豊かな場所へ遠出してリフレッシュするのもいいですが、身近な場所で簡単にリセットできる旅もまた魅力的ですね。
日本有数の高原リゾートが広がる長野県
長野県には中央アルプスの他、富山県との境には北アルプス、山梨県との境に南アルプスがあり、日本有数の高原リゾートとして知られています。スキーはもちろん、夏のグリーンシーズンも絶景が楽しめる避暑地として、多くの人が訪れる人気スポットに。
最近注目を集めているちょっと贅沢なアウトドア体験が楽しめる“グランピング”は、社員旅行にも人気。普段と異なる環境に身を置くことで、心が開放され、ビジネスアイデアも生まれやすく、コミュニケーション活性化に一役買ってくれるといわれています。
「スノーピークフィールドスイート 白馬・北尾根高原」は、白馬八方尾根にあるオーベルジュスタイルのラグジュアリーグランピングサイト。標高1,200mの絶景フィールドに特別仕様の宿泊テント7棟と建築家・隈研吾さんのデザインしたモバイルハウス「住箱-JYUBAKO-」をベッドルームにした住箱スイート1棟があります。
全室エアコン、Wi-Fi設備完備で食事はイタリア星付きレストランで腕を振るってきた鈴木信悟シェフのコース料理を用意。お風呂は「白馬八方温泉」から運び上げた温泉を使用するなど、細部にも徹底したこだわりが貫かれています。
森林トレッキングや高原マッサージ、星空観察など、高原リゾートならではのアクティビティが充実。1社で貸切利用も可能なので、社員研修やオフサイトミーティングなど多彩な利用ができます。
もう一つ、長野で話題なのは“天空の楽園”といわれる阿智村。すぐ近くにある昼神温泉にゆったりと宿泊し、「日本一の星空ナイトツアー」を楽しむことができます。
環境省が実施している全国星空継続観察で平成18年度「星が最も輝いて観える場所」の第1位に認定するなど、その知名度は年々アップ。街の光が届かない山頂までの星空遊覧や、山頂に寝転んでガイドからの解説を聞きながら楽しむ星空観察など、ここだけの演出で宇宙旅行をしている気分が味わえます。
また、昼神温泉では介護が必要な方の旅行を介護の専門家がサポート。お1人様でも阿智村の星空や温泉地滞在が楽しめる「昼神★プレミアムサポート」という制度があります。
詳しくは阿智昼神観光局に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
丘陵地や山々が連なり、温泉大国としても知られる群馬県
関東エリアからは人気の温泉地・群馬県。特に草津温泉は古くから名湯として全国にその名を轟かせています。
また、コロナ禍ではウイルスを不活性化する効果が期待できると話題に。「じゃらん人気温泉地ランキング2022」では調査開始以来16年目で、「もう一度行ってみたい温泉地」で第1位を獲得するなど、再注目を集めています。
群馬県には「浅間山」「草津白根山」「日光白根山」「赤城山」「榛名山」と5つの活火山があり、いまなお大自然の営みがダイレクトに感じられる場所。特に浅間山は噴火の傷跡が生々しく感じられる「鬼押し出し園」が有名です。
“日本で最も美しい村”の一つである「六合(くに)」地区や本州最大の湿原といわれる尾瀬ヶ原、上毛三山の一つに数えられる赤城山など、自然の中にゆったりと身を置いてあわただしい日常をリセットできる場所がいっぱい。
“リトリートぐんま”をテーマにさまざまな旅のスタイルを提案していますので、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
千葉県に残された最後の秘境といわれる君津市へ
千葉県は都内のベッドタウンとして発達。少し離れた房総エリアは週末気軽に楽しめるリゾート地として開発が進んでいます。
しかし、そんな房総半島にもまだ手付かずの自然が残された“秘境”がありました。それは君津市!
県内では2番目に広い面積を持ち、古い城下町としての面影を残す久留里エリア、マザー牧場がある鹿野山エリア、県下最大級の亀山湖を有する亀山エリアがあります。
中でも亀山温泉では“リトリート”に力を入れており、亀山湖ビューの絶景とチョコレート色のユニークな温泉、大自然の中で楽しむヨガ・瞑想・森林浴などさまざまなプランが用意されています。
少し足を延ばせばハート型に光が差し込む「濃溝の滝」や、条件が揃えば雲海が現れる「鹿野山九十九谷眺望公園」、ホタルが幻想的に乱舞する「清水渓流広場」など、都心に近いとは思えないほど。
企業向けのリトリートプランや研修プログラムも充実しているので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
ウィンターシーズンだけではない、北海道・ニセコの実力
北海道は社員旅行の行き先で沖縄と毎年1、2を争う人気の観光地。しかし、訪れるのは札幌や小樽、函館、富良野とポピュラーな観光地ばかりではないでしょうか。
ニセコはもちろん、スキーリゾートとしては海外からも大人気ですが、どうしてもグリーンシーズンは観光客が少なくなってしまうようです。
羊蹄山の裾野に広がる国定公園は、登山やトレッキング、カヌー、ラフティング、乗馬などさまざまなアウトドアスポーツが楽しめるのが魅力。豊かな農作物、豊富な泉質の温泉、クラフト体験、牧場体験など北海道らしいアクティビティも。
サイクリングを使ったエコツーリズムも盛んですので、心身を開放してSDGsな過ごし方も満喫できますよ。
タイ・ホアヒンで“究極のウェルネスリゾート”を体験する
首都バンコクから車で約3時間、タイの王室御用達の避暑地として知られるホアヒンに、世界中から注目を集める“究極のウェルネスリゾート”、「チバソム・インターナショナル・ヘルスリゾート」があります。
ホリスティックなアプローチで思考、体、心の理想的な健康状態を目指せる総合的なサポートを提供。ゲノム遺伝子検査も新サービスとして導入し、1人ひとり異なる遺伝的な特質に応じて、ライフスタイル、環境因子、食習慣が与え得る影響を明らかにするなど、まさに最先端をいくプログラムが充実しています。
企業が年に1回行っている健康診断・人間ドッグでは、改善というアクションに繋がりにくい面もあり、また、体だけではなくメンタル面でのサポートも充実しているのが嬉しいポイント。
普通の社員旅行からワンランクもツーランクもアップグレードし、「参加してみたい」と思わせるプレミアムな旅が叶います。
これからの社員旅行・慰安旅行は「ウェルネスツーリズム」が鍵!
ただ自然豊かな場所へいって、おいしいものを食べるだけではなく、自分自身と向き合い、どのような生き方・働き方をしたいのか内省する。そのことで見えてくる新しい自分との出会いが楽しめるのが「ウェルネスツーリズム」の魅力。
他の社員との関わり方、仕事との向き合い方などを含め、よりステップアップできるチャンスとなるのではないでしょうか。
各自治体も「ウェルネスツーリズム」という視点に切り替えることで、いままでは「観光資源が何もない町(村)」だったのが、それが最大の武器になるというビジネスチャンスも到来しています。
単なる義務や苦手な社内イベントでしかなかった社員旅行・慰安旅行も、ウェルネスという視点で見直せば自分自身の人生も変えるようなきっかけになるかもしれません。
ウェルネスツーリズムもプロにお任せすれば、社員旅行・慰安旅行が何度でも参加したい行事の一つになっていくことでしょう。
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