江戸時代まで羽黒派修験道の聖山として信仰を集めてきた出羽三山。今回の旅は月山神社・出羽神社・湯殿山神社を巡る1泊2日のオリジナルバスツアーです。
1回目は月山神社参拝のために登山。鶴岡にある湯野浜温泉へ1泊した時のエピソードをご紹介しました。
2回目は羽黒山・湯殿山への参拝を中心に、酒田町(現酒田市)出身の世界的な写真家、土門拳さんの記念館や湯殿山総本寺 大日坊で真如海上人の即身仏を拝観した際のエピソードをご紹介します。
即身仏についての豆知識をちょこっと!
即身仏とは、飢餓や病の苦しみ、悩みを代行し、救済のために修業に挑み、自らの体を捧げて仏となられた方のことをいいます(山形県公式観光サイトより)。未来永劫生き続け、人々の祈りを見守ってくれる存在。
『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』に掲載され、海外の方にも広く知られるようになりました。また、映画「湯殿山麓呪い村」や昭和48(1973)年に芥川賞を受賞した森敦さんの『月山』、最近では村上春樹の『騎士団長殺し』などの小説にも取り上げられ、ご存じという方もいらっしゃることでしょう。
即身仏となるための修行は大きく分けて2つあるといいます。一つは山に籠り、1,000~5,000日かけて米・麦・豆・稗・粟などの五穀・十穀を絶ち、山に育つ木の実や山草だけで過ごす「木食修行」。
肉体の脂肪分を落とし、生きている間から即身仏に近い状態に体をつくりあげていく修行です。
命の限界が近づいたことを悟った後、深さ約3mのたて穴(入定塚)の石室の中に籠ります。その中では断食を行い、鈴を鳴らし、お経を読み続ける最後の修行。
死後3年3ヶ月後に掘り起こされ、若干の手当をしてから乾燥させ即身仏として安置されます(やまがた庄内観光サイトより)。
山形県では現在、以下6か所で即身仏を拝観が可能です。
- 不動山 本明寺「本明海上人」(山形県鶴岡市)
- 砂高山 海向寺「忠海上人」「円明海上人」(山形県酒田市)
- 湯殿山 瀧水寺大日坊「真如海上人」(山形県鶴岡市)
- 湯殿山 注連寺「鉄門海上人」(山形県鶴岡市)
- 修行山 南岳寺「鉄竜海上人」(山形県鶴岡市)
- 巌龍山 蔵高院「光明海上人」(山形県白鷹町)
日本で残されている即身仏は全部で17体あり、そのうち8体は山形に集中しています。その理由は山岳信仰の聖地である出羽三山の一つ、湯殿山信仰と深い関わり合いがあるそうです。
即身仏の多くが湯殿山で修業した僧侶といわれ、開山した弘法大師・空海に由来する「海」の字がつけられています。
貸切バスでホテルを出発、まずは「土門拳記念館」へ
まず1か所目は酒田市飯森山公園内にある「土門拳記念館」を訪れました。土門拳さんは、昭和を代表する写真家で寺院仏像などを撮らせたらピカイチといわれるお方。
「古寺巡礼」は我が家にもありますが、どの仏像もまるで生きているかのように活き活きとした表情を見せてくれます。また、場面の切り取りが秀逸でついつい見入ってしまいました。
仏像以外にも報道写真や人物写真、文楽なども数多く撮影。絵も文章も書くマルチクリエイターだった土門さんの生きざまを体感できる場所でした。
館内には土門さんの愛用品とともに、2021年に株式会社小学館から発売された超特大写真集「土門拳[小学館SUMO本]」も展示されていました。
見開きB1サイズ(69㎝×見開き横1m)と大迫力の作品集です。お値段はなんと352,000円(税込)。買おうかどうか迷う関裕二先生。果たして購入されたのでしょうか?
こちらの本を見るためのの専用書見台も別売りで販売されています。おそらく故・義父なら買っちゃうな、絶対と思う嫁(私)でした。
Information
土門拳記念館
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
※展示替えのため臨時休館あり、詳しくはホームページのカレンダー参照
入館料:700円、高校生350円、中学生以下無料
※20名以上の団体で割引あり、特別展期間中は料金が変更になる場合あり
住所:山形県酒田市飯森山2-13(飯森山公園内)
アクセス:酒田駅から車で焼く10分、貸切バスなら日本海東北自動車道・酒田ICより約5分
※公園内駐車場(無料)利用可能
羽黒山とは「現世利益を叶える山」
バスで羽黒山まで移動。羽黒山は蜂子皇子(はちこのおうじ・第32代崇峻天皇第三皇子)が推古天皇元年(593年)に、出羽神社を創祀されたのが始まりで、現在の世を生きる人々を救う仏(聖観世音菩薩)を祀ったそうです。
本来ならば羽黒山の石段(随神門から山頂まで続く2,446段、約2km)を片道約1時間かけて登り、参拝するのが正式ですが、時間がないこともあり、今回はバスで出羽神社(羽黒山三神合祭殿)に向かいます。
その前に国宝である羽黒山五重塔を見に行きました。
国宝・羽黒山五重塔を見るならいまがチャンス!
平安期平将門の創建、東北地方では最古といわれている羽黒山五重塔。現在の塔は応永5年(1372年)にこの地方の領主・武藤政氏により再建されたといわれています。
高さ約29m、屋根は日本古来の柿葺(こけらぶき)、三間五層の素木(しらき)造りという伝統的な手法で作られている塔はため息がでるほど美しく、荘厳なたたずまいを見せていました。
近くには国天然記念物「羽黒山の爺スギ」といわれる樹齢1,000年以上ともいわれる杉の老木を始め、たくさんの杉に囲まれた神聖な空気が漂う場所。写真ではたびたび見ていましたが、実際にその場に立つと、圧倒的な存在感に思わず手を合わせてしまいますね。
羽黒山五重塔は来年(2023年)から杮葺の修繕事業が始まり、覆いがかけられるそうです。全景を見ることができるのは2022年がチャンス。
生まれ変わった五重塔がお目見えするのは令和7年(2025年)になります。
Information
羽黒山五重塔
住所:山形県鶴岡市羽黒町手向羽黒山
※隋神門から徒歩約10分
アクセス:鶴岡駅から路線バスで約35分、貸切バスなら山形自動車道鶴岡ICから約10㎞
※観光バス駐車場は「隋神門前駐車場」を利用
貸切バスで羽黒山山頂へ「出羽神社(羽黒山三神合祭殿)」を参拝
バスは一路、羽黒山の山頂へ。こちらの出羽神社(羽黒山三神合祭殿)は1年中お詣りが可能。月山のご祭神である「月読命(夜と水を司る神)」や湯殿山の「大山祇命(山の神)と大己尊命(国土の神)、少彦名命(医薬の神)」、羽黒山の「伊氏波神(土地の神)と稲倉魂命(食物の神)」を1か所でお祭りしています。
雪で閉ざされてしまう月山や湯殿山へお詣りできな時期でも参拝ができるというわけです。ツアー参加の皆さん、各々参拝し、御朱印をいただくのですが、普通の観光客とは違う場所で大興奮(古墳にコーフン!?)が巻き起こります。
それは・・・。
崇峻天皇が暗殺された際、聖徳太子の勧めにより蜂子皇子(はちこのおうじ)は宮中を脱出。越路(北陸道)を下り、能登半島から船で海上を渡り、佐渡を経て由良(現鶴岡市)の浦に辿りついたところ、三本足の大きな鳥が飛んできて、羽黒山へと導いたといいます(山形県ホームページより)。
出羽三山の開祖と伝えられる蜂子皇子は、人々に農耕を教え、産業を興し、治病の方法を教え、人々のあらゆる苦悩を救うなど、幾多の功徳を残されたとか。蜂子皇子は醜いお姿をしていたそうですが、これは人々の苦悩を一身に引き受けたからだとも言われています。
御尊像は明治以降、蜂子神社の奥深く仕舞われたままでしたが、東日本大震災の復興への思いを込めて平成26年(2016年)に特別公開されました。
Information
出羽神社(羽黒山三神合祭殿)
住所:山形県鶴岡市羽黒町手向字手向7
アクセス:鶴岡駅から路線バスで約50分、貸切バスなら羽黒山有料道路を利用して鶴岡ICから約10㎞
※観光バス駐車場は山頂にもあります。
「休暇村庄内羽黒」でランチ、ちょっと気にかかるお土産発見
2日目のランチは「休暇村庄内羽黒」へ。ちなみに1日目は登山だったのでアミノバイタルとおにぎりを食べました。
休暇村庄内羽黒は羽黒山スキー場に近く、修学旅行やゼミ合宿、スポーツ合宿にも人気の宿。レストランでは昼食もいただくことができます。
今回はツアーでの利用でしたので、あらかじめ旅行会社の方が団体向けに昼食を準備しておいてくださいました。午後の予定が詰まっているので少し巻き気味に食事を終了。
その後、売店をふらふらしていると気になるお土産が!それは酒田米菓の「オランダせんべい」。
こちら、県民なら知らない人はいないという銘菓だそう。山形県庄内産のうるち米を約3mmの極薄に焼き上げたものです。
うるち米を使っているのが「せんべい」、もち米を使っているのが「あられやおかき」です。
なんで「オランダ?」と思いましたが、酒田米菓によると田んぼが広がる庄内の風景がオランダの風景に似ていること、庄内地方の方言で「私たち」を「おらだ」ということなどから、「私たちの米で作った私たちのせんべい」→「おらだのせんべい」→「オランダせんべい」となったとのこと。
実際に購入して帰りましたが、めっちゃおいしかったです。お米がおいしければ加工してもおいしいわけですね。
Information
休暇村庄内羽黒
住所:鶴岡市羽黒町手向字羽黒山8番地
アクセス:羽黒山山頂近く
いよいよ即身仏と対面「湯殿山総本寺 瀧水寺大日坊」へ
湯殿山は、807年に空海さんが開山。瀧水寺大日坊は湯殿山の総本寺で、ご本尊は湯殿山大権現(秘仏)です。
出羽三山がかつて女人禁制だったため、入山できない女性を空海さんが憐み、湯殿山大権現を掘ったと伝わっています。
瀧水寺大日坊は徳川家と深い縁があります。後の三代将軍家光となる竹千代君誕生に伴い、乳母である春日局は、将軍家の跡目争いに勝つため、湯殿山大日坊の御本尊(弘法大師御自作)に祈願。
無事、三代将軍になることができたといいます。その後も手厚い保護を受け、徳川将軍家全国七ヶ寺の一別當祈願寺と定められました。
明治の廃仏毀釈で湯殿山は没収され、焼き討ちにより伽藍は焼失。地すべり被災などに見舞われましたが、昭和11年(1936)に現在の場所へ規模を縮小して移転しました。
湯殿山は神道に変更されて出羽三山神社の管理になりましたが、仏の教えを継承して弘法大師の本髄を守り続けている大日坊。秘仏は6年に1度(丑歳と未歳)に御開帳があります。
そして湯殿山大日坊といえば即身仏、仏門に生涯を捧げた“代受苦菩薩 真如海上人(だいじゅくぼさつ しんにょかいしょうにん)”です。前段で即身仏について解説しましたが、ご住職のお話によると「完全な即身仏」は真如海上人ただお1人だとか。
エジプトではミイラが有名ですが、こちらは亡くなった方のご遺体から内臓などを取り出し、防腐処理を施すなどして人工的に作られたもの。一方、即身仏は厳しい修行の末に体内から脂肪や水分を落とし、土の中に入って断食死。数年後に掘り出されたものです。
真如海上人は腐敗雑菌の発生を防ぎ、朽ちない身となるために漆を飲んだといいます。このため、体の中の血管や内臓などがすべてそのまま残されており、まさに“生きながら仏”となられたとか。
今もなお、湯殿山大日坊の中で空海さんと共に、多くの方に救いの手を差し伸べ続けています。
Information
湯殿山総本寺 瀧水寺大日坊
拝観時間:8時~17時(16時30分まで受付)
拝観料:大人500円、中学生400円、小学生300円
※30名以上の団体で割引あり
住所:山形県鶴岡市大網字入道11
アクセス:鶴岡駅より車で約40分、バス駐車場あり
旅のラストは「語るなかれ、聞くなかれ」といわれる湯殿山へ
最後は「未来の世」を表すといわれる湯殿山へ。標高約1,500mの湯殿山は月山に連なり、その中腹に湯殿山神社が鎮座しています。
出羽三山の奥の院であり、修行した山伏が即身成仏する場所とされてきました。今もなお山伏が修行をする「行場(ぎょうば)」であり、生まれかわりを果たす聖地でもあります。
湯殿山神社の御神体は、赤茶けた巨大な巨石。上部から温泉が湧きだしており、裸足になって禊を受けた後に登拝が許されます。
裸足で登拝するのは大日如来と一体になる行為とされているそう。松尾芭蕉も「語られぬ湯殿にぬらす袂かな 」と詠んでいます。
日本人の自然崇拝を今にとどめ、俗世とは切り離されたまさに御神域。「語るなかれ、聞くなかれ」といわれてきた湯殿山神社本宮は鳥居をくぐった先は写真撮影禁止です。
大きな岩から温泉が流れ落ちる光景はなんとも神秘的で、自然と畏敬の念が湧いてきます。拝観を終え、心身がすっかり清められたようなすっきりした気持ちになりました。
湯殿山神社本宮までは、仙人沢からシャトルバスに乗り換えて往復。最後のバスが16時35分なので、それを逃すと参拝できません(徒歩で片道20~30分ぐらいかかる)。
お昼ご飯も大日坊もひたすら巻き気味で進行。幹事であるゆだぽんさんの表情が険しくなったり、ほっとしたりしているのをみつつ、ハラハラしていました。
無事に時間通り間に合ってよかったです。
参拝を終え、バス乗り場に向かうと美しく荘厳な山形の山並みが眼下に。
ことばではいい現わせないほど荒々しく、厳しく、そして美しい風景。そのたたずまいに私たちの祖先は神(仏)の姿を見、信仰の場としていまも大切に守り続けているのだと実感しました。
Information
湯殿山神社本宮
湯殿山有料道路営業時間:8時15分~16時40分(入口ゲートは15時50分で閉鎖)
※例年6月~11月上旬までの営業、冬季は閉鎖
住所:山形県鶴岡市田麦俣六十里山7
アクセス:鶴岡駅から車で約5分(湯殿山有料道路利用)、仙人沢からシャトルバス(庄内交通)に乗り換え約5分
羽黒山・湯殿山参拝&土門拳記念館編まとめ
月山に比べると、羽黒山や湯殿山は初心者でも比較的参拝しやすいといえます。特に湯殿山では、日本人が多神教の民であること、自然への畏怖と崇拝を思い起こさせてくれました。
今回の旅で最も印象に残った場所です。
出羽三山では現在も修験道の修行が行われており、諸国山伏出世の行と呼ばれる秋の峰と、土地の信仰に深く結びついた冬の峰の二つです。
荒澤寺正善院の秋峰では女性入峰が可能、出羽三山神社では秋峰入峰とは別に女性のみの神子修行を行っています。
白装束を身にまとい、俗世界から離れて修行の一端を体験する「山伏修行体験」は日帰りから2泊3日まで可能。団体の場合は17名以上で8月~10月まで受付しています。2022年は申込み多数のため受付終了。
来年以降にぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
次回3回目は番外編として立石寺へ。山形の食文化の素晴らしさ、レベルの高さについてもご紹介したいと思います。こうご期待!
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*ゆだぽんさん&山形・出羽三山を巡る旅参加者の皆さま、お写真の提供や撮影協力ありがとうございました!
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