
高知県の東南部にある室戸市。太平洋へV字形に突き出した室戸半島のほぼ全域を占めます。
面積の約8割は山林。四国では唯一ユネスコ世界ジオパークにも認定され、日々新しい大地が生まれ続ける場所として地球のダイナミックな営みを体感することができます。
派手な観光地はなく、便利はものもあまりないところですが、夜は降り注ぐような満天の星空が楽しめ、海洋深層水を活用したスパ、イルカとの触れ合いが楽しめるドルフィンセンターなど、自然の恵みや癒しがいっぱいあります。

今回、室戸ジオパーク推進協議会主催による「ウェルネスツーリズムモニターツアーinむろと」に参加。室戸市のポテンシャルを存分に感じる旅となりました。
ツアーは2025年3月3日(月)~5日(水)の2泊3日で催行されたのですが、生憎の天候続きで暗い写真が多くなってちょっぴり残念。予定変更も余儀なくされてしまったものの、自然の厳しさも優しさもまるごと楽しめた3日間をご紹介しましょう。
単なる健康だけではなく、心の豊かさ、ワーク・エンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態のこと)の向上を図れること間違いなしですよ。
2泊3日ウェルネスモニターツアーinむろと(予定スケジュール)
<1日目>
羽田から高知へ→室戸まで車で移動→室戸世界ジオパークセンター(プレガイドツアー・オリエンテーション)→ランチ→シレストむろと(海洋深層水でデトックス)→グランピング施設「MUROTO base55」宿泊
<2日目>
「MUROTO base55」出発→室戸岬乱礁遊歩道(瞑想ウォーク)→「MUROTO base55」で朝食・チェックアウト→夫婦岩・唐谷の滝散策→炭の家ほのぼの(田舎寿司づくり体験・昼食・土佐備長炭窯や資料館見学など)→「民宿 徳増」宿泊
ツアー2日目はこちら≫
<3日目>
「民宿 徳増」出発→尾崎海岸で浜ストレッチ→「民宿 徳増」でブランチ→室戸世界ジオパークセンターでフィードバック→車で奈半利駅へ移動→高知駅着・終了
自然と人と聖地を活用した室戸ジオパークのウェルネスツーリズム

高知駅から車で約2時間、神戸の三ノ宮駅からは約4時間と決してアクセスが良いわけではありません。しかしながら、目の前に広がる力強く美しい海を見ることができるとともに、手付かずの山林やのどかな里山の風景、鮮度抜群の海産物に豊かな農作物、伝統産業、人情あふれる町の人との触れ合いなど、都会では失われてしまった魅力的なコンテンツがたくさんあります。
そして、室戸ジオパーク最大の魅力は「海と陸が出会い、新しい大地が誕生する最前線」であること。空海(弘法大師)が修行し、悟りを開いた聖地、つまりエネルギーうず巻くパワースポットです。
心を空っぽにしてむき出しのままの自然と向き合い、大地のエネルギーで満たされることで得られる変化などなど。
今回、室戸市にしかない地域資源を活用したさまざまなプログラムを実際に体験し、モニターツアーを通じて感じたことを参加者や推進協議会のメンバーと共有しすることで、唯一無二のウェルネスツーリズムを完成させていく第1歩となりました。
初日からいろいろつまづくモニターツアー、波乱の幕開け!?

関東圏から高知への入口は高知龍馬空港。羽田からJAL・ANAが、成田空港からジェットスターが1時間20分~30分で結んでいます。
関西からは大阪伊丹空港からANAが結んでおり、所要時間は約45分。電車なら新幹線で岡山経由で特急(約2時間30分)、高速バスで5時間ちょっとといったところでしょうか。
今回のモニターツアーに参加したのは全部で6名。私以外は京都・滋賀・徳島からの参加者で皆さん車で室戸市入りしています。

私は羽田からJALで高知入りしたのですが、給油が間に合わないということで30分遅れての出発w。お昼からジオパークのプレツアーが予定されていたので、室戸ジオパーク推進協議会の方が空港まで車で迎えにきてくださったのですが・・・。

間に合いませんでした。しかも室戸市では強風と雨で傘もさせないほどの悪天候。早くも「自然の前で人間は無力」を痛感する幕開けとなってしまいました。
昼食は「サバらしい日々」で高知の恵みを満喫

室戸市では毎年2月から季節限定の人気企画「サバらしい日々」を開催。参加されている飲食店で、採れたての旬サバを1食1,000円で提供していました。

サバ定食、すき焼き、お刺身、炙り寿司などなど。今回は地元の人で賑わう「なかまち食堂」へ、皆さんとおじゃましました。
サバ定食が人数分なかったのでオリジナルアレンジをしてくれた「なかまち食堂」

漁港近くにある昔ながらの“町の食堂”という雰囲気の「なかまち食堂」。「サバらしい日々」で提供している定食が人数分ない、ということで急遽ありものでアレンジ対応してくださいました。

鮮度抜群のサバのお刺身、具だくさんのお味噌汁、煮物、小鉢、一口デザートが付いて1,000円(税込)とは激安。

私がいただいたのがバッテラメインの定食で、炙りサバを使ったボリューミーな押し寿司にお刺身までついている豪華さ。うどんやそば、ラーメン、どんぶりものなどもあり、棚や冷蔵庫に並ぶお惣菜を自由に選んで定食にすることもできます。

家の近くにあったら通い詰めてしまいそうな食堂でした。室戸岬周辺の飲食店は小さいなお店が多いので、グループごとに分散して食事を楽しまれるか、「料亭 花月」が団体受入可能となっています。
Information
なかまち食堂
営業時間:8時30分~17時(土曜は13時時まで)、日曜祝日・第2水曜休み
住所:高知県室戸市室津2584
問合せ先:0887-22-1789
「室戸世界ジオパークセンター」でオリエンテーション

食事の後は「室戸世界ジオパークセンター」へ移動。室戸市の概況や今回のモニターツアーの流れを説明いただきました。
ユネスコ世界ジオパークの拠点として2015年4月にオープンした「室戸世界ジオパークセンター」

ジオパークの楽しみ方を知り、実際にフィールドを巡り、地元に人たちからの話を行くこともできる「室戸世界ジオパークセンター」。私は参加できませんでしたがプレツアーではガイドさんの案内で、室戸岬の先っぽをぐるりと歩き、大地誕生の最前線を体感されたそうです。
「ブラタモリ」大好き派の私にはすごーくうらやましい・・・。

この他、室戸ユネスコ世界ジオパークを生成する大地の成り立ちから、大地の上で育まれた人々の営みなどの展示が充実。

特に室戸岬は南海トラフ地震発生に伴う隆起や沈降を繰り返しており、現在でも沖合に自信観測計を設置してリアルタイムで表示して地震の発生予測に利用されています。室戸ジオパーク推進協議会では学校向けの環境・防災学習プログラムを提供し、日本唯一の津波避難シェルターの見学なども行っています。
「シレストむろと」が臨時メンテナンス、午後の予定はお遍路に!?

午後私たちが訪れる予定となっていた「シレストむろと」ですが、機械の不具合で急遽休業に。海洋深層水でデトックス、楽しみにしてたのに・・・と残念がる声しきり。
そこで当初の予定にはなかった四国88カ所霊場「最御崎寺(ほつみさきじ、東寺)」へ行くことになりました。こちらは807年に空海(弘法大師)が開基した真言宗豊山派のお寺。
実は私、2024年6月に香川で初めてのお遍路旅を経験し、空海について「空海と密教 解剖図鑑(武藤郁子さん著・株式会社エクスナレッジ刊)でにわか勉強したばかりです。この予定変更は願ったりかなったり!?
しかも夫の実家は真言宗豊山派。これも何かのお導き。せっかくなので最御崎寺までお遍路道でアクセスすることになりました。
Information
室戸世界ジオパークセンター
営業時間:9時~17時
住所:高知県室戸市室戸岬町1810-2
問合せ先:0887-23‐1610
やっぱり酸素が足りない!?「最御崎寺」へのお遍路道に1人息があがる

最御崎寺は標高164mの山の上にあり、お寺へと向かうお遍路道はそこそこの急こう配でした。うっそうと茂る野生のクワズイモにびっくり(関東では観葉植物という認識)。
途中、空海ゆかりの「捻岩」も(空海七不思議の1つだそうです)。

空海が修行中の時、その身を案じて室戸を訪れたご母堂様が山に登りかけると暴風雨に。空海は真言を唱えて風を静め、岩を捻じってその中に避難させたと伝わる岩です。

途中、東屋があり休憩するものの、酸素が足りない私(ちくわ)は口をパクパクしながら必死に追いかけます。最近筋力に余力があっても心肺機能の衰え!?ですぐに酸素が足りなくなり、山登りがキツクなりました・・・。
空海が悟りを開いた岬の上に建つ「最御崎寺」

「最御崎寺」に到着しました。さすが南国土佐だけあってどこかトロピカルな植生です。
若き空海(当時は真魚少年)が故郷、四国の聖地である大瀧嶽(だいりゅうだけ)、石鎚山、室戸岬を巡り歩き修行。岬の海岸近くにある洞窟(御厨人窟・神明窟)で虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう、記憶を増大させるという行)を修行したそうです。
その時、空に輝く明星が空海の口に飛び込み、ここが仏法の最適地であると感得、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)の像を刻んだといいます。その後唐へ渡り、長安で恵果に師事。

密教の正統を継承し、真言密教(真言宗)を創始します。唐から帰朝した空海は、再びこの地を訪れ、嵯峨天皇の勅願を受けて伽藍を建立しました。
「最御崎寺」や室戸岬に残る空海の七不思議

室戸には空海の七不思議という伝承が残されているそうです。1つ目は「一夜建立の岩屋」で一夜で掘った洞窟(現在はお寺の宝物館に所蔵)、2つ目は境内にある「鐘石」。
岩をたたくと鐘のような音が出て冥土まで届くそうな。叩いてみたら確かに金属音がしました。
3つ目は同中に自生していた「クワズイモ」。土地の人が芋を洗っていたら空海が通りかかり、乞うたところ「これは食えない芋だ」と言ってあげなかったそうです。それ以来、本当に食べられなくなったと伝わります。
4つ目はジオパーク内にある「行水の池」。御厨人窟(みくろど)で修業した際、ここで水浴びをしたそうです。海際なのに真水ということが不思議。
5つ目は先ほどの「捻岩」、6つ目は「明星石」。空海が修行中、夜な夜な海から毒龍が現れ、異形のものを集めて邪魔をしました。空海が真言を唱え、海に向かって唾を吐くと、海岸の石が夜空の星のように光り、その光に恐れをなして逃げ去ったそうです。
7つ目は「目洗いの池」。眼の病に苦しむ村人のために空海が池の水に加持祈祷したところ、治癒したと伝わります。
「最御崎寺」の御詠歌と御朱印

せっかくなので最御崎寺の御朱印もいただいて帰ります。最御崎寺(東寺)の御詠歌は「明星の出でぬる方の東寺くらき迷いはなどかあらまし」。

納経帳を持参しなかったので、御詠歌の裏に書いていただきました。
ちなみに「最御崎寺」が東寺と呼ばれるのは室戸岬で東側にあるから。西側にある26番札所「金剛頂寺」は西寺と呼ばれています。
Information
最御崎寺(東寺)
住所:高知県室戸市室戸岬町4058-1
問合せ先:0887-23-0024
室戸岬のシンボル「室戸岬灯台」

「最御崎寺」を後にして室戸岬灯台へ向かいます。こちらは1899年(明治32年)に完成、日清戦争直後の海運助成策で建設された灯台のひとつです。
現存する鉄造の灯台として日本で2番目に古く、海の難所・室戸岬を120年以上に渡り間照らし続けています(日本最古は須磨海浜公園にある旧和田岬灯台)。室戸岬先端、標高151mの山上にあり、レンズの大きさは直径2m60cmと日本最大級(日本でも数少ない1等レンズ)。
約49キロ先まで照らすことができるそうですよ。灯台の中は11月1日に近い土日で行われる「灯台まつり」で一部開放されます。また10名以上の団体向けに散策ツアーも催行。
灯台脇の階段を下ると、灯台守が暮らしていた官舎跡が

室戸岬灯台の灯台守が暮らした石造りの旧官舎跡が残されています。敷地からは太平洋が見渡せる絶景が広がり、迫力満点。

こちらの場所では食事会や点灯した室戸岬灯台の鑑賞会などさまざまなイベントが開催され、新たな灯台利活用を進めているとのこと(海と灯台プロジェクト 新たな灯台利活用モデル事業)。
ちなみにこの岬の下には坂本龍馬とともに京都で暗殺された中岡慎太郎(陸援隊隊長)の立像が。

室戸岬の先端近くに太平洋を見据えるように建っています。龍馬とともに薩長同盟締結に尽力し、維新の礎を気づいた北川村(“モネの庭 マルモッタン”があるところ)出身の中岡ですが、龍馬に比べると知名度も人気も今一つ・・・と残念がる地元の方。
NHK大河ドラマ「龍馬伝」で龍馬を演じたのが福山雅治さんだったからでしょうか。でも中岡慎太郎さんは上川隆也さんが演じてたのに・・・。
単純に龍馬像は高知空港や駅に近いところにあるからでは・・・とひそかに思う私でした。
Informaton
室戸岬灯台
住所:高知県室戸市室戸岬町
問合せ:0887-22-0574(室戸市観光協会)
室戸スカイライン山頂展望台「高岡園地展望台」に寄り道

室戸岬から今夜泊る予定の「MUROTO base 55」へ向かう前にもう1か所寄り道。室戸スカイライン山頂展望台となる「高岡園地展望台」へ。

標高258mの津呂山の山頂にある展望台で360°のパノラマ景色が楽しめる人気スポットです。
室戸岬は地盤隆起と海食により、日本有数の海岸段丘が広がっています。特に東海岸から2,200m沖は一気に深くなり、水深1,000m以上の海底谷が存在。
西海岸と比べてみると海の色が全然違うことがわかります。生憎の天気で残念ですが、いつかまた晴れた日にリベンジしたいと思いました。
Informaton
室戸スカイライン山頂展望台(高岡園地展望台)
住所:高知県室戸市室戸岬町
問合せ:0887-22-0574(室戸市観光協会)
今夜の宿は室戸市自然体験型観光交流宿泊施設「MUROTO base 55」へ

1日目の宿泊先である「MUROTO base 55」に到着。バイクライダー交流宿泊施設(ライダーズイン室戸)をリニューアルし、新たにグランピング施設として2020年2月にグランドオープンしたものです。
宿泊はコンテナハウスとキャビン棟があり、客室のインテリアはそれぞれすべて異なるインテリア(IKEA)となっていました。
コンテナハウスの前にはテラスとハンモックも

じゃんけんに敗れ、トイレが付いてないタイプのお部屋に宿泊。北欧風のインテリアでコーディネートされたおしゃれな居室です。

コンテナハウスの前にはミニテラスがあり、ハンモックやソファなども。夕方は海に沈む夕焼け、夜はこちらから満天の星空をゆったりと眺めることができます。

男女別のシャワー棟、トイレ棟、そしてチェックインなどを行う管理棟。

管理棟は朝食会場としても使用されていました。
夜は満天の星空の下で豪華なBBQ!?

夜は外で豪華なBBQ(グランピング施設ですし)。しかし、天候は回復せずに雨交じりの風が吹く肌寒い中での夕食となってしまいました・・・。

BBQエリアには2つの焚火と炭火を使った焼き台が用意され、希少な高知の土佐あかうし・四万十ポークのステーキ、お刺身、カツオのタタキ、室戸産の野菜、炭パン、アヒージョなどさまざまな食材が並びます。

「MUROTO base 55」のオーナーさんが炭焼きをされているということで、炭を練り込んだパン、炭ウインナーなども。下写真の黒くて四角いのが炭パンです。

さらに炭ビール・炭サワーもありました。

最後に炭カルボナーラも提供され、まさに炭尽くし。

焚火の火の揺らぎは「1/fゆらぎ」と呼ばれる波動の1つ。人間が心地よく感じるリズムで、炎を見ているとリラックスしてきます。
食事を楽しんだ後は焚火を囲んで仲間とゆったり過ごせば、日常を忘れてリフレッシュできること間違いなしですね。

夕食のBBQメニューは「通常BBQコース」の他、「プレミアムBBQコース」「10種類から選べるBBQプレートプレミアムコース」などがあり、各コースを予約した場合は追加の食材・飲み物のお持ち込みも可。
30種類の飲み放題コース、日帰り飲み放題付きプランもあるそうなので、問合せてみてはいかがでしょうか。
翌日は室戸岬乱礁遊歩道(瞑想ウォーク)や田舎寿司づくり体験、炭焼き釜見学と楽しみな予定がてんこ盛り。お天気の回復を祈りつつ・・・就寝です。
晴れませんでした~。
Informaton
MUROTO base 55
住所:高知県室戸市室津2836番地2
問合せ:0887-98-7011
■取材協力
室戸ジオパーク推進協議会
所在地:室戸市室戸岬町1810-2
問合せ先: 0887-22-5161
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